エンカウント (ラーメン藤@松本市)
深夜、松本駅前。
終電の23時以降はそれまでの喧騒とは異なる不思議なテンションに包まれる街と化す。飲み方酔い方は人それぞれ。酒によってマイナス方向に導かれる人もいれば、プラス方向に引っ張りあげられる人もいる。体調を崩す者、疲労を隠せない者、自信がみなぎる者、夢を語る者、そんな人間達の吐息が融合して渦となり、街の空気を形成するのだ。
なんてね。
この夜、5軒目に選んだのはこの「ラーメン藤」。ゆったりまったり呑んでいた3軒目4軒目とは異質な熱気に圧倒されつつも、辛うじてテーブルの隅に居場所が与えられた状況にほっと一息を付いた。
「役員会の打ち上げなのよ」とご機嫌に語る奥様方数名と相席となる。摂取した酒の量は我々といい勝負だろう。男性が一人いるようだが見ている限り意識が怪しい。
彼を除き、皆元気だ。彼女らはしきりに私の鼻を気にしてくるが、全然意味が解らない。恐らくこちらの話も意味が解らないことだろう。なにせ我々も4軒目で爆睡したメンバーを一人擁する同レベルな存在な訳だから。RPGの世界のように様々なパーティが集う酒場と考えると少し楽しい。
ふとテレビの下を見ると、裏町にラーメンQが復活するという知らせが掲示されている。オープンは10月中旬のようだ。過去に行ったことはあるが泥酔していて記憶が無い。ああ、今日の酔いなんかカワイイ方だ。二日酔いの朝にはベホイミが欲しくなる。いや、キアリーか。
餃子をつまんでいると、「あいよー」と言いながらルイーダがラーメンを運んできた。
この相席の方のように「このラーメンは飲んだ後じゃなきゃ食べれないのよね」と言う人も多いが、私は夕方の残業時間前にこの店に来る場合が多く、素面でも大満足している人間である。但し、柔麺は食べたくないため「硬めに茹でて」とお願いすることもある。もやしとネギをワシワシと食らい、空いた隙間から麺を引き出すと、うむ、今日の茹で加減は抜群だ。心なしかチャーシューが少なく感じるが、酔っているから数が数えられないのだろう。
そして奥様はノーマルな藤ラーメンを食べる我々に対して「この店は激辛に決まっているでしょう!!」と無理やり食べさせる行為に出た。パーティ間闘争を容認しない平和主義的な我々はPvPを回避するため素直に従うが、とある店のマスターに「ヤンニョン」と教えてもらったテーブル上の辛味調味料をいれると同等のラーメンになることを最初から知っている。そう、途中からの味チェンも魅力なのだ。
後から来たが、先に食べ終え、店を出る。
まだ深夜の2時前だが、相席の方々は始発までマクドナルドで過ごす予定らしい。
凄い人達だ。絶対に見習わねえ。
ああ、ルーラを唱えるMPが無い。
財布の中の僅かなゴールドを数えた後、手を上げて馬車を止めた。
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